セブに到着した、初日の夜。ホテルの部屋に戻ろうとしたら、エレベーターが動きませんでした。
スマホはネットにつながらず、翻訳アプリも使えない。英語も出てこない。
親子留学の記念すべき初日に起きた、小さな、でも本気で焦った事件のお話です。
カードキーをかざしても、ボタンが反応しない
現地時間で、夜の20時半ごろ。日本ではもう21時半です。夕食を終えて、パパはモールの探索へ。私は息子と二人でエレベーターに乗り込み、部屋に戻ろうとしていました。
フロントで説明を受けたとおりに、カードキーをかざして、自分の部屋の階のボタンを押します。
……反応しない。
もう一度かざして、押す。やっぱり反応しない。何度やっても同じでした。
このホテルのエレベーターは、カードキーをかざした人だけが、自分の泊まっている階のボタンを押せる仕組みでした。セキュリティのためのものですが、そのカードが効かないとなると、部屋のある階には上がれません。
そのとき、同じエレベーターに最上階まで行く方が乗っていました。私たちはその方と一緒に、最上階まで行くことに。もちろん、そこに私たちの部屋はありません。一緒に乗っていた方は申し訳なさそうに降りて行き、私たちはエレベーターの中に取り残されました。
試しに他の階のボタンを押してみたところ、フロントのある階は、カードをかざさなくても押せました。息子と笑顔で顔を見合わせ、そのままフロントへ向かうことにします。
頼みの綱のスマホが、使えない
移動中、Google翻訳で説明しようとスマホを開いて、そこでもうひとつの事実に気づきます。
——ネットに、つながっていない。
到着したばかりで、eSIMをまだ使える状態にできていなかったのです。あとから分かったのですが、原因は「データローミング」をオンにしていなかったことでした。
今なら分かります。ここで落ち着いて、ホテルのWi-Fiにつなげばよかったのです。でもそのときは、そこまで頭が回りませんでした。
知っている単語をかき集めても、文にならない
仕方がないので、自分の頭の中にある英単語を必死に引っ張り出します。エレベーター、カード、動かない、階……。
単語は浮かぶのに、それを説明する文章にできない。「どう言えば伝わるんだろう」と考えているうちに、エレベーターはフロントの階に着いてしまいました。
息子と二人、不安を抱えたままフロントへ向かいます。
なぜか、部屋の前に作業着のお兄さんが二人
フロントで、たどたどしい英語と身振りで、なんとか状況を伝えようとしました。するとフロントの方が「ついてきて」というジェスチャーをします。
案内されるまま一緒にエレベーターに乗り、たどり着いたのは——自分たちの部屋の前。しかもそこには、作業着を着たお兄さんが二人、待ち構えていました。
「……?」
頭に疑問符を浮かべる私をよそに、フロントの方と作業着のお兄さんが何やら話しながら、私のカードキーを部屋のオートロックにピッとかざします。ドアは、あっさり開きました。そして「オートロック、大丈夫だよ」というような顔でこちらを見るのです。
あ。「部屋のドアが開かない」と伝わっていたんだ——と、そこでようやく気づきました。
部屋の前でやりとりしていると、ちょうどパパもモール探索から帰ってきて、「どうしたの?」とビックリしてましたが、軽く状況を説明して疲れた息子と一緒に先に部屋に戻ってもらいました。
身振り手振りで、伝わった
私はそこからまた、説明のやり直しです。エレベーターを指さし、カードをかざす仕草をして、首を横に振る。もう一度、フロントの方と一緒にエレベーターへ。実際にカードをかざして、ボタンが反応しないのを見てもらいます。そうしてやっと、「エレベーターのボタンが押せない」という状況が通じました。
原因は、カードの不具合でした。新しいカードに交換してもらい、ようやく部屋のある階へ。
息子に不安を与えないよう、ずっと気丈にやりとりしていたので、部屋に入った瞬間、どっと疲れが押し寄せてきました。軽くシャワーを浴びて、フィリピン到着初日は終わりです。
同じ場面で困らないために
今回のことで学んだことを、まとめておきます。
- ネットが使えないと気づいたら、まずホテルのWi-Fiにつなぐ。落ち着けば当たり前のことですが、焦っていると本当に思いつきません
- eSIMは「データローミング」をオンにしないとつながらないことがあります。現地到着後はすぐに設定方法を確認しておくと安心です
- 言葉が通じないと、思わぬ誤解が生まれます。困っている「場所」を指させると早い。今回なら、最初にエレベーターの中で指さして説明すればよかったのです
- カードキーの不具合は、起こりうるもの。おかしいと思ったら、早めにフロントへ
- そして——完璧な英語でなくても、伝わります
初日から、大きなことを学んだ夜
初日の夜は、英語が通じないことに本気で落ち込みました。「これから1ヶ月、大丈夫だろうか」と。
でも今になって思えば、この一件は、私にとって大きな一歩でした。逃げずにフロントへ行って、誤解されても説明をやり直して、身振り手振りで、最後にはちゃんと解決できたのですから。
そして、その一部始終を、息子は横で見ていました。
完璧でなくても、伝えようとすれば道は開ける。教科書では教えてもらえないことを、私たちは初日から、体で学ぶことになったのです。こんなレベルの英語力なので、滞在中他にも色々と失敗しますが、それも留学の良い思い出になりました。10年後、「あの時、エレベーターで焦ったよね~」と、大人になった息子と楽しく話せる日を、今から楽しみにしています。
